軽い認知症の方へのサポート「日常生活自立支援事業」とは
「日常生活自立支援事業」とは
福祉サービスを利用したいけれど、手続きの仕方がわからない。
銀行に行ってお金をおろしたいけれど、自信がなくて誰かに相談したい。
商品勧誘の人が来たとき、どう対応していいかわからない。
毎日の暮らしのなかにはいろいろな不安や疑問、判断に迷ってしまうことがたくさんあります。
日常生活自立支援事業は、このような場合に、福祉サービスの利用手続きや、金銭管理のお手伝いをして、安心して暮らせるようにサポートしてくれます。
福祉サービスとは
例えばホームヘルプサービスやデイサービス、食事サービス、入浴サービス、就労支援や外出支援サービスなどさまざまなものがあります。
対象者は
判断能力が不十分である認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方であり、かつ本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方です。
例えば、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などで判断能力が不十分な方が対象になります。
なお、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を持っていたり、認知症の診断を受けている方に限られるものではありません。
ホームヘルプサービスや配食サービスといった福祉サービスの利用、その他日常生活上のさまざまな契約をするときに、自分ひとりで判断するには不安がある、預金の出し入れや日常生活に必要な公共料金などの支払い方がわからないといったことでお困りの方もご利用できます。
また、施設に入所したり、病院に入院した場合でも、日常生活自立支援事業のサービスを利用することができます。
判断能力が不十分で本事業の契約を結ぶことが困難な状態の方は、利用できません。
成年後見制度(法定後見)を利用することが必要となります。
日常生活自立支援事業のサービス内容は
・福祉サービスの利用に関する情報の提供、相談
・福祉サービスの利用における申し込み、契約の代行、代理
・入所、入院している施設や病院のサービスや利用に関する相談
・福祉サービスに関する苦情解決制度の利用手続きの支援
・福祉サービスの利用料金の支払い代行
・病院への医療費の支払いの手続き
・年金や福祉手当の受領に必要な手続き
・税金や社会保険料、電気、ガス、水道等の公共料金の支払いの手続き
・日用品購入の代金支払いの手続き
・預金の出し入れ、また預金の解約の手続き
・住宅改造や居住家屋の賃借に関する情報提供、相談
・住民票の届け出等に関する手続き
・商品購入に関する簡易な苦情処理制度(クーリング・オフ制度等)の利用手続き
・保管を希望される年金証書、預貯金通帳、証書(保険証書、不動産権利証書、 契約書など)、実印、銀行印、その他実施主体が適当と認めた書類(カードを含む)などの預かり
※宝石、書画、骨董品、貴金属類などはお預かりできません。
「日常生活自立支援事業」を利用したい場合は
日常生活自立支援事業の相談は、市区町村の社会福祉協議会に連絡してください。
利用希望者は、市区町村の社会福祉協議会で、相談、申請を行います。
契約締結について判断し得る能力があるかどうかの判定を行い、契約締結についての能力に問題がある場合は、成年後見制度の利用等適切な対処をすることになっています。
「日常生活自立支援事業」の費用は
相談や支援計画の作成にかかる費用は無料。
福祉サービス利用手続き、金銭管理などのサービスを利用する際は料金がかかります。
各地域の社会福祉協議会によって異なりますが、一般的には支援サービスの料金が時給1000~1900円で、書類預かりに関しては月額1000円程度です。
成年後見制度との違い
利用するには
・日常生活自立支援事業を利用するには、社会福祉協議会の判断でよい
・成年後見制度(法定・任意)を利用するには、家庭裁判所の審判が必要
お金の管理は
・日常生活自立支援事業は、毎日の暮らしに欠かせない、お金の出し入れのみ(例 病院への医療費の支払い 日用品購入の代金支払い 預金の出し入れ、また預金の解約 等)
・成年後見制度(法定・任意)は、高額な金銭管理、不動産の売却など日常的な金銭管理を超える財産管理にも対応
高齢者施設の入所、病院の入院の手続きは
・日常生活自立支援事業は、高齢者施設の入所、病院の入院の手続きはできないが利用に関する相談はできる
・成年後見制度(法定・任意)は、高齢者施設の入所、病院の入院の手続きの代理ができる
施設入所、入院時に必要となる身元保証人になれるか
・日常生活自立支援事業は、身元保証人になれない
・成年後見制度(法定・任意)は、身元保証人になれない
身元保証人がいなく、また身寄りもない方々は、高齢者等終身サポート事業者などを検討することになります。
日常生活自立支援事業の注意点・問題点
日常生活自立支援事業でできないこと
・買い物
・身体介護
・家事援助
・外出支援
・身元保証、身元引受
・現金の預かり
・宝石、書画、骨董品、貴金属、株券、小切手の預かり
・遺言書の預かり
・自宅の鍵の預かり
・契約行為の代理
日常生活自立支援事業の注意点
・本来は後見等申立が必要なケースでも関係機関から契約を強く求められるケースがある
・入院や居所の移動時の契約はできない
・日常生活上の金銭管理の範疇を超える法律行為はできない
・軽い認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない方が対象で本人の能力が高い場合は対象外
・死後事務には対応していない
最後に
知的障害者や精神障害者、認知症の方が家族の中にいる場合、日常生活自立支援事業はとても役立ちます。
このサービスでは、書類の預かりや金銭関連の手続きなど、日常的で軽微な事務を他人にサポートしてもらえます。
利用料金も成年後見制度に比べて格段に安価です。
ただし、このサービスは利用者の死後の手続きには対応していません。
従って、特に身寄りのない方、家族に頼れない方は死後の事務に備えるためには、判断能力の低下が軽微のうちに「死後事務委任契約」の締結が不可欠です。
そして、認知症の進行度合いに応じて、成年後見制度への利用を検討しましょう。