そなえる遺言書の作成ガイド(遺言書作成相談)
身寄りのない方や家族に頼れない方で、遺言書を作成したい方は、まずこちらをご検討ください。
身寄りのない方のための安心終活ガイド(終活支援、死後の手続き相談)
なぜ、遺言書が必要か。
- 「紛争防止」のため
- 遺言書があれば遺産分割協議書が不要になる
- 遺産整理を速やかに行うため
遺言書がないとご本人が亡くなった後、子の配偶者が遺産について横から口を出し遺産分割が進まないことがあります。
遺産分割協議書は相続人全員の合意が必要なので手間がかかります。相続人が納得し合意したら全員の署名、実印での捺印、印鑑証明書が必要です。
これらを揃え完成するまで半年間以上はかかります。しかし一番の問題は相続人の意見がなかなかまとまらないことです。その為「遺産分割協議書」ではもめることがありますので遺言書が有効です。
どこの銀行にお金を預けているのか。どこの証券会社の口座に株があるのか、これらすべてを把握し名義変更しなければなりません。
ご本人にしかわからないものもあるため、遺言書に記載しておけばスムーズに事務処理を行えます。
おすすめは「公正証書遺言」
遺言の形式は3つあります。
① 公正証書遺言
② 自筆証書遺言
③ 秘密証書遺言
① 公正証書遺言
公正証書遺言を断然おすすめします。
理由として、公証人が必ず内容を確認し、遺言を書いた本人と面談するためです。
面談を通じて、遺言の内容が本人の意思に基づいていることを確認します。
これにより信頼性が高まり、後々遺言が問題になるケースが少なくなります。
実際の公証役場での面談では、公証人から遺言の内容について質問されます。
その際、最低限、誰が何を相続(遺贈)するのか、誰を遺言執行者に指定するのかを、遺言者本人の口から答えられるようにしておく必要があります。
答えられない場合、公正証書の作成を断られることもあるため、注意が必要です。
公正証書作成には手数料がかかりますが、作成した公正証書遺言の「原本」が公証役場で保管されるため、安心です。
公正証書遺言を作成すると、その「原本」は公証役場で厳重に保管されます。
原本と同じ効力を持つ「正本」と「謄本」が交付されますが、これらは一般的に遺言者と遺言執行者が保管します。
遺言者が亡くなった後、遺言に記載された内容を実行する義務があるためです。
「原本」は公証役場で厳重に保管され、さらに「正本」と「謄本」が存在するため、遺言が失われることはありません。
公正証書遺言を作成したい場合は、自分の財産の内訳がわかる書類を持参すれば、公証役場で文面に落とし込んでくれます。
しかし、公証役場では公正証書の作成手続きに関する相談はできますが、遺言の内容についての相談は行っていません。
内容についての相談は、専門家にご相談ください。
公正証書遺言作成手続きには2人以上の証人の立会いが必要です。
② 自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、その名の通り自筆で書いた遺言書のことです。
日付、氏名、全文を自ら手書きし、押印します。
財産目録はパソコンで作成しても良いですが、すべてのページに署名捺印しなければなりません。
よくあるトラブルとして、全文をパソコンで作成してしまうケースがあります。
また、同じ住所に2棟の家屋が建っている場合、建物は「所在」や「家屋番号」で登記されているため、これらで特定しなければなりません。
しかし、住所だけを遺言書に記載してしまうと建物が特定できないトラブルが発生します。
これでは、せっかく苦労して書いた遺言書が無効になってしまいますので注意が必要です。
遺言を執行するためには検認が必要です。
こちらもあわせてご覧ください。「手書きの遺言の財産目録についてはパソコンでもOK」
< 自筆証書遺言書保管制度について >
法務局で自筆証書遺言(手書きの遺言)を保管してもらえるようになりました。
手数料は、3,900円です。
自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、遺言書の紛失、破棄、改ざんの心配はありません。
ただし、誤字脱字や不明瞭な記載があると、遺言書が無効になる可能性があるため、十分な注意が必要です。
こちらもあわせてご覧ください。「法務局で自筆証書遺言が保管できるようになりました」
③ 秘密証書遺言
遺言書の存在を明らかにしつつ、その内容を秘密にして保管することができます。
本文を自書する必要はなく、パソコンで作成することも可能です。
署名が自筆であれば、文字を書くことができない方でも遺言書を作成できます。
秘密証書遺言の場合、公証役場では遺言書が存在することだけが記録され、遺言書自体は保管されません。
作成した遺言書を封筒に封印し、遺言を作成した本人が公証役場に遺言書を持参します。
公証人が、その遺言を本人が作成したということを確認して、その旨を封書に書き入れ、遺言者と証人とともに署名押印します。
この確認手続きを遺言者本人の立会いで行うため、改ざんの心配はありません。
しかし、遺言書が紛失したり、発見した人が自分に不利な内容だと判断して、破棄、隠匿、改ざんする危険性がまったくないとは言えません。
紛失、未発見のリスクがあるため、遺言書の保管には十分な注意が必要です。
手続きには2人以上の証人の立会いが必要であり、遺言を執行するためには検認が必要です。
秘密証書遺言は、現状あまり使われていません。
遺言書を作成したほうが良いケース
- 推定相続人の中に音信不通者や浪費者がいる人
- 先妻との間に子があり、後妻がいる人
- 推定相続人同士の仲が悪い場合
- 独身の方やお子さんがいない夫婦
- 法定相続分と異なる配分をしたい場合
- 自営業の場合
- 配偶者が認知症の場合(遺言書がないと家裁で法定後見人選任)
- 推定相続人に知的障がい者がいる場合(遺言書がないと家裁で保佐人、補助人の選任)
- 財産は自宅のみで預貯金が少ない場合
- 老後の世話をしてくれるかたがいる場合(例えば、長男の嫁に遺産を分けたい)
- 内縁の妻がいる場合
- 第1順位ではない相続人に配分したい(例えば、子ではなく孫に配分したい等)
- 公共団体へ寄付したい場合
遺言書で法定相続人以外の人に財産を遺贈する方法
最期まで自分の面倒を見てくれたパートナーや友人など、法定相続人以外の人に財産を渡したい場合は、迷わず遺言書を作成しましょう。
友人など特定の相手に遺産を託すことを「遺贈」といいます。
また、特別な思いを抱く団体に寄付する「遺贈寄付」という方法もあります。
いずれにしても、遺言書には「誰に何の財産を渡すか」「どこの団体に寄付するのか」「不動産や家財をどう処理するのか」など、自分の希望を明記しておくことが重要です。
遺留分とは?その基本と知っておくべき重要ポイント
被相続人は、原則遺言等により自由に財産を処分できます。
しかし、これを無制限に認めると、相続人の生活保障が図られなくなることから一定の範囲の相続人に対し、一定割合の相続権を保証しています。これを「遺留分」といいます。
いくらお世話になっている人に「全財産を渡す。」と記載しても、法定相続人が権利を主張した場合、遺留分の部分は必ず取得させなければなりません。
後々のトラブルを避けるためにも、遺言書には遺留分を侵害しない形で作成しましょう。
遺留分の割合
- 直系尊属のみが相続人である場合は相続財産の3分の1
- 配偶者、子は相続財産の2分の1
- 兄弟姉妹はなし
※残りの3分の2は被相続人の意思でが自由に処分できる分
被相続人に子はいなくて、父母だけが相続人の場合
父は6分の1(総体的遺留分3分の1×法定相続分2分の1)
母は6分の1(総体的遺留分3分の1×法定相続分2分の1)
どちらか一方のみの場合は3分の1
※残りの2分の1は被相続人の意思で自由に処分できる分
配偶者と子が相続人の場合
配偶者は4分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分2分の1)
子は1人なら4分の1、2人なら8分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分2分の1又は4分の1)
配偶者と父母が相続人の場合
配偶者は3分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分3分の2)
父は12分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分6分の1)
母は12分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分6分の1)
どちらか一方のみの場合は6分の1
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者は2分の1
※残りの2分の1は被相続人の意思で自由に処分できる分
兄弟姉妹はない
子のみが相続人の場合
子が1人なら2分の1
※残りの2分の1は被相続人の意思で自由に処分できる分
例えば、妻と長女、長男、次男がいます。相続財産が6000万円ありました。
私は、妻3000万円、長女2500万円、長男250万円、次男は250万円相続させるという遺言書を作成しました。
長男と次男の相続分が少ないが有効か。
有効ですが、長男と次男の遺留分はそれぞれ12分の1(総体的遺留分2分の1×法定相続分6分の1)です。つまり、それぞれ遺留分500万円は確保されたほうが良いです。
長男と次男は250万円ずつしか相続していないため遺留分を侵害されています。長男と次男は、長女に対して遺留分侵害請求をすることができますが、遺留分侵害額請求はしてもしなくても遺留分権利者(長男と次男)の自由です。
しかし、このような遺言は遺留分を無視しているためもめる危険があります。後で遺留分侵害額請求されるおそれのある遺言は遺言書を作成する意味が薄れてしまうため、遺留分には配慮しましょう。
遺留分侵害額請求権は遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から、1年間行使しないと時効によって消滅します。
こちらもあわせてご覧ください。「遺留分を侵害された者は遺留分侵害額に相当する金額の請求をできるようになりました」
遺言執行者とは?
遺言者が亡くなったときに、遺言書に書かれている内容を実行する者のことを遺言執行者といいます。
遺言書に遺言執行者を指定すると、その執行者は「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為」を行う権利と義務を持ちます。
遺言書に遺言執行者が指名されている場合、遺言の内容を実行できるのは原則としてその遺言執行者です。
2019年の民法改正により、遺言者が遺言書で別段の意思表示をしない限り、遺言執行者は自身の責任において第三者に任務を行わせることができるようになりました。
遺言執行者には未成年者と破産者以外がなれるため、知人や専門家に依頼することも可能です。
「公正証書遺言を公証役場で作成すれば、すべて公的な機関が処理してくれる」と誤解される方もいますが、公証役場は遺言の執行を行いません。
遺言執行者がいない場合、相続人全員で遺言の実現を目指します。
しかし、遺言内容に不満を持つ相続人がいると、実現が難しくなることがあります。
その場合、相続人や受遺者は家庭裁判所に遺言執行者の選任を請求することができます。
遺言執行者にはどんな義務があるの?
- 任務の開始義務
- 遺言内容の相続人への通知義務
- 財産目録の作成・交付義務
- 善良な管理者としての注意義務
- 報告義務
- 受取物等の引き渡し義務
- 補償義務
遺言執行者として就任した時は、直ちにその任務を開始しなければなりません。
遺言執行者は、自分が遺言執行者であることと、遺言の内容を各相続人・受遺者に通知しなければなりません。相続人が勝手に遺産を処分しないようにするためです。
遺言執行者は、遺言書に記載してある財産を調査し、相続人や関係者に協力を求めて財産目録を作成し相続人に交付します。
遺言執行者は、注意義務に違反すると、相続人に対して債務不履行の責任を負うことがあります。
遺言執行者は、相続人から要求があった時はいつでも執行状況について報告しなければなりません。
遺言執行者は、相続人のために関係者から受領した金銭や物等を相続人に引き渡し、あるいは移転しなければなりません。
遺言執行者は、遺言執行として相続人のために受領した金銭を自己のために消費したときは、相続人に対して、消費した日以降の利息を支払わなければなりません。
遺言執行者を指定したほうが良いの?誰を選べば良いの?
ぜひ、遺言執行者を指定しておきましょう。
未成年者、破産者以外なら遺言執行者になることができますが、一般の方にお願いすると何もしないで放置という方もいますので専門家をおすすめします。
特に法定相続人以外の者への遺贈がある場合、「相続人である自分たちを差し置いて遺産を他人に渡すなんて!」と感情的になり、争いが生じるケースが少なくありません。
遺言執行者を相続人に指定すると、トラブルの原因になりやすいです。
特に、相続人の中で最も多く相続する者が遺言執行者になると、他の相続人から「自分に有利な遺言書を書かせたに違いない!」と感情的になり、協力を得にくくなるかもしれません。
第三者である受遺者を遺言執行者に指定しても同様です。
相続人でさえ遺言執行者に就任すると他の相続人から疑問や不満を持たれやすいのに、第三者である受遺者が遺言執行者になると、なおさらトラブルが発生しやすくなります。
こうしたトラブルを避けるためにも、遺言執行者には専門家を選任することが望ましいです。
法定相続人以外に財産を遺贈する場合、不動産登記は受遺者だけで行うことはできず、単独で登記できるのは遺言執行者のみです。
遺言執行者がいない場合には、相続人全員と受遺者が共同で登記申請を行う必要があります。
相続税が心配だから相続税対策?
「相続したらすべての人に相続税がかかる」と勘違いしている方が意外と多いです。
実際には、相続する遺産の総額が3,600万円以下の場合、相続税は発生しません。
相続税を申告して支払う人の割合は約10人に1人です。
この割合は亡くなった人の数に対する相続税の申告件数の割合であり、実際に相続税を払った人の割合ではありません。
また、遺言書作成時に7000万円の財産があっても、介護施設への入居や入院による長期の療養、お墓の購入などの老後の準備で、相続時には1000万円程度しか残っていないこともあります。
将来どうなるかは分かりませんが、遺産を残すことを考えるよりも、自分の人生を楽しむために財産を使い切ることが一番の理想だと思います。
したがって、相続税対策に関してはそれほど意識しなくても良いのではないでしょうか。
まとめ
遺言は公正証書遺言にしましょう。
費用、時間はかかりますが、公証役場に原本が保管されるので内容の変造や紛失がなく、形式不備により無効になることもないので確実です。
シンプルな遺言にしましょう。
最近では、公正証書を作成する際に、遺言者に自分の言葉でポイントを述べさせたりする公証人が増えています。
これは、大阪高裁の判決で、公証人が口授をしっかりやっていないという理由で公正証書遺言が無効になったためです。
高齢者の方はシンプルな遺言なら述べることができますが、複雑な遺言の場合、ほとんどの高齢者の方は述べれないため、作成をお断りして、再度シンプルな遺言に作り直してもらうそうです。
特に、節税対策を目的とした遺言や信託を設定している遺言は非常に複雑であり、一般の方はもちろん専門家にも理解しづらい内容となることがあります。
高齢者がこのような高度なスキームを理解しているかどうかが問題となり、争いが発生した際には裁判所も疑問を抱くことがあるようなので遺言はシンプルにしましょう。
遺留分に配慮しましょう。
遺留分を無視する遺言は最初から紛争を抱えています。
テレビやインターネット、書籍で調べれば遺留分の存在などすぐにわかります。
遺留分を主張しない相続人はまずいないという認識を持って遺言書を作成することが大事です。
専門家に遺言執行してもらいましょう。
遺言書の作成はまだ半分の段階です。
安心・安全な相続となるかはその遺言内容を実現する遺言執行者にかかっています。
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公正証書遺言作成サポートプランのご案内
遺言書がない相続は原則、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停が行われます。
調停は平均1年、長くて3年を超えます。調停まで進んでしまうと親族関係の修復は難しいです。
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まずは、お問い合わせください。
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※重要な書類ですので実印でお願いします。
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行政書士が戸籍、住民票調査、財産調査をします。
遺言者と面談し調査報告、遺言内容の打ち合わせをします。
行政書士が、遺言者の意向に沿ってご納得ゆく遺言原案を作成します。
遺言者と再面談し、遺言原案の確認と修正をします。
公証人と作成日時を決めます。
当日遺言者と行政書士2名が証人として公証役場へ同行し公証人が遺言公正証書を作成します。
「遺言公正証書」完成です
報酬残金の支払いをお願いいたします。