身元保証人と後見人は何が違う?
高齢者支援としての身元保証人と成年後見人の違いについて説明します。
成年後見人は、認知症などで判断能力が低下した方(成年被後見人)の財産管理や、被後見人の生活、治療、療養、介護などの身上監護を行う法定代理人のことで、民法で定められています。
成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。
一方、高齢者支援としての身元保証人の役割は、主に、入居者についての債務の保証、退去・死亡時の身柄の引き取り、非常時・緊急時の各種対応です。
具体的には、成年後見人は、法的な判断が困難な状況にある個人(通常は高齢者や病気の方)を保護する法定代理人です。
家庭裁判所が選任します。
一方、身元保証人は、高齢者や支援を必要とする方に対して、家族代行として身元保証を提供し、日常生活の支援を行う者です。
身元保証人は、ご本人との契約により就任します。
ただし、成年後見人がいても、身元保証人の役割をすべて果たせるわけではないため、別途身元保証人を求める高齢者施設は少なくないというのが実情です。
また、士業の方など第三者が後見人になっている場合は、身元保証人になることはできません。
親族が後見人に指定された場合“親族”の立場として後見人と身元保証人の役割を同一の人が兼ねることもあります。
身元保証人と後見人の違い
成年後見人(法定後見人)
・本人に判断能力がなく申し立てに基づき、家庭裁判所が後見人の選任をする。
・本人の「法定代理人」であり、「第三者としての支援者」である。
・後見人は、本人の財産管理及び身上監護を法的に任された方。
・医療の同意権限はない。
身元保証人
・本人に判断能力があり、本人が身元保証人を選定する。
・本人と「一心同体」であり、「家族代理人」である。
・本人との医療や介護等の相談対応をおこなう。
・医療の同意権限はないが、本人が事前に作成した書面でその意思を代弁することはできる。
・医師対応をおこなう。
・ご逝去後の葬儀・納骨、家財処分、遺言執行やすべての清算業務などの対応が求められている。
成年後見人と身元保証人を兼任できない?
成年後見人と身元保証人を兼任することはできません。
身元保証人は、本人と一心同体の関係です。
一方、成年後見人は、本人の生活状況や財産状況をチェックする役割があります。
身元保証人と成年後見人が同一人物だったら、自分で自分をチェックすることになりまた、本人が本人の保証人になるということになるので矛盾が生じます。
これらは、利益相反に該当する可能性があります。
実際のケースで、身元保証人として指定されている任意後見受任者が、任意後見を発動させるために家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てたら、監督人を選任する際に身元保証人の地位を解任しなければならなかったというケースもあります。
家庭裁判所は、身元保証人と後見人の兼務を認めないという判断をしていると考えられます。
また、令和6年6月に公表された「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」では、任意後見に係る適正性を確保するため、任意後見契約に関する法律上、任意後見人またはその代表者と本人の利益が相反する行為については、任意後見監督人が当該行為を代表することとされています。(任意後見契約に関する法律第7条第1項第4号)
現状では、後見人等は身元保証人になれないものの、一部の施設や病院では仕方なく成年後見人を身元保証人として受け入れているところもあります。
※ 身元保証人の定義については、まだ法の整備が整っていません。そのため、施設や病院では認識がバラバラなので契約時には、施設や病院側によく確認をお願いします。
最後に
判断能力がある方には後見人は立てられませんので、ご家族やご親族の有無を問わず、様々な事情により入院・入所の際に身元保証人が立てられない高齢者の方は、誰かしらに身元保証人をお願いする必要があります。
ご本人に判断能力がない場合には後見人(法定後見人)が対応します。
後見人は、身元保証人や連帯保証人に就任することはできません。
将来、本人の判断能力が低下したときに、本人の財産管理や療養監護に関する事務を行う任意後見人も同様となります。
身元保証人と後見人は、どちらか一方だけが必要という訳ではなく、本来は両者とも求められています。
両者とも検討することが推奨されています。