身寄りのない方の墓じまい・改葬とは?
身寄りのない方で先祖のお墓を承継していて、自分以外にお墓の世話をする人がいない場合には、墓じまい・改葬を考える必要があります。
何もしないと死後、無縁墓となってしまうおそれがあるからです。
お墓参りに墓地に行くと無縁墓の周囲は荒れ放題となっているため、墓地の景観が損なわれてしまっています。
墓地の管理は大切な責任であり、放置された無縁墓の増加と不法投棄される墓石の問題は深刻化しています。
これにより、墓地全体の美観が損なわれるばかりか、先祖を偲ぶ場所としての尊厳が失われてしまう恐れもあります。
お墓を継ぐ人がいない場合には、やむを得ず墓じまいをせざるを得ないこともあります。
墓じまい・改葬を検討する際には、地域の法律や慣習を尊重しつつ、適切な手続きを行うことが重要です。
まずは、生前のうちに菩提寺や関係者と相談し、適切な墓じまい・改葬を行うことが大事です。
ご高齢者のお墓に関するお悩み
墓守する家族がいるいない問わず、お墓に関する悩みは多いようです。
特に多いのは、
1. 遠くて大変だからお墓を移したい。たとえ県内でも遠方だから移したい。
2. 菩提寺との関係性をなんとかしたい。自分の代では良いが、子の代になった時に菩提寺との付き合いはこのままで良いのか、または両親の代では菩提寺と仲が良かったが今は菩提寺と面識がないからどうしようか。
3. 後継ぎがいないおひとり様なので、お墓を何とかしたい。
4. お骨を本家のお墓に入れてもらっているが、お骨だけを移したい。
これらを考慮すると、多くの人が家族や周囲の人にお墓のことで迷惑をかけたくないという思いから、今のうちに墓じまいの準備をする方が多いようです。
今後ご遺骨の供養をどうするか
今あるご遺骨を、今後どのような形で供養するか、ご遺骨の行き先を決めなければなりません。
どうするか大きく分けると2種類に分けられます。
1つは、現在のお墓を更地に戻して、菩提寺に返還します。
ご遺骨は、合祀墓(永代供養)に移し供養してもらいます。
この供養の仕方は、墓じまいして遠方からご遺骨を持ってくるより、現在の場所で永代供養したほうが良いのではないかとお考えの方が多いです。
2つ目は、新たな墓地を購入しご遺骨を引っ越しします。
この供養の仕方は、今の菩提寺の合祀墓に入れてしまったら、このまま檀家でいなければいけないのではないのかと思われている方や想像していたより合祀墓の費用が高額だったので移したという方が多いです。
「墓じまい」「改葬」とは?
「改葬」と「墓じまい」は、お墓の処理方法に違いがあります。改葬は、お墓や遺骨を別のお墓へ移動させることを指します。
一方、墓じまいは、お墓を処分することを指します。
改葬は、さまざまな事情により、今あるお墓をそのまま別の場所へ移したり、お墓は処分して別の(または新しい)お墓や納骨堂、永代供養墓などに納骨して供養することを指します。
自宅で遺骨を保管する手元供養、海や山などに粉骨した遺骨をまく散骨は、改葬にはあたりません。
一方、墓じまいは、今あるお墓を処分して土地を更地にし、墓地の管理者に永代使用権を返却します。お墓の撤去・解体をした後は、お墓を管理することはなくなります。
埋葬することなく、自宅で遺骨を保管する手元供養や海や山などに粉骨した遺骨をまく散骨などの供養方法を選択した場合、墓じまいとなります。
お墓の引っ越し(改葬)には注意⁉
お寺にとって改葬は、長年の檀家が離れることになるし、親戚にとっては故郷との縁を切ることになるため、トラブルの原因となりかねません。
檀家を離れる際には、離檀料を支払わないと、埋葬許可証明書に署名・捺印してもらえない寺院もあります。
お墓の引っ越しをスムーズに行うには、事前に既存のお墓の管理者や親戚などの理解を得ることが大切です。
どうしても、菩提寺のご住職に言いづらい場合や話したくない場合、改葬業者にすべてお願いする方もいらっしゃいますが、業者からご住職に話をされると印象が悪くなり、スムーズには行かないことが結構あるそうです。
必ず、ご本人からお寺さんに一声かけていただいた後で、改葬業者にお願いしましょう。
そうすれば、スムーズに話が進みます。
どうしても、言いづらい方は、おすすめキーワードがあります。
「家族親族と話をして移し先も決めています。今の場所は、遠方でお墓を見る人もいないのでお寺さんにご迷惑をおかけしてしまうので、この機会に移そうと思っています。つきましては、書類や工事については業者さんから改めてご連絡させますのでよろしくお願いいたします。」
と話していただければ、スムーズに話が進むと思いますので試してみてください。
ポイントは、お墓の引っ越しの相談をするのではなく、もうすでにお墓を引っ越すことが決まっているという報告をしてください。
離檀料について
お墓の引っ越しについて、お寺さんに話にくいと感じる方々の多くは、費用について何か言われるのではないかと心配されていることが多いです。
インターネットで調べると、何百万円もの離檀料が請求されたという事例が出てくるためです。
今では、墓じまいが一般的になりつつあるため、何百万円もの請求が滅多に行われることはほとんどありません。
一般的に、離檀料についての法的規定は存在しません。
寺院がこれを求めるのは慣習的なことであるので、支払う義務はありませんが、寺院によっては檀家規則というもので離檀料を求める場合もあると言われています。
今までお世話になったお寺さんなので、感謝の気持ちを込めて少し多めのお布施を包むことも必要だと思います。(だいたい20~25万円ぐらい)
離檀料の相場は、一般的に3~15万円(法要1回分の金額)と言われています。
これは目安であり、地域、宗派、個々の状況によって異なります。
もし、納得いかない金額を請求されたら、その場で返事をせずに「家族と相談する」と伝え、専門の改葬業者にお願いするという方法もあります。
相談してみてください。
お墓の引っ越しの流れ
① 新しいお墓の購入。
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② 古い墓地がある市役所へ行き「改葬許可申請書」の用紙を受け取り、記入して古い墓地の管理者から署名捺印をもらう。署名捺印がある「改葬許可申請書」と新しく購入したお墓の「永代使用許可書」を、古い墓地がある市役所へ提出。
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③ お墓の魂抜き(閉眼供養)。
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④ ご遺骨の取り出し。
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⑤ 新しいお墓へ納骨して魂入れ(開眼供養)。新しい墓地先へ「永代使用許可書」と「改葬許可書」を提出。
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➅ 古い墓石を撤去し、墓地を更地に戻して返還。
ご遺骨の運送方法
お寺さんで魂抜き(閉眼供養)をしてもらったら、ご遺骨を取り出し、新しい墓地に運搬します。
ご遺骨を取り出すときに、地域によってはご遺骨が撒かれていたり、骨壺が割れて他のと混ざっていたりする場合もあります。
その際には、ご遺骨として残っていれば、それらを集めて骨壺や供養袋に入れて運搬しましょう。
車で運ぶときは、トランクやキャリーバッグに入れて運搬します。
ほとんどの骨壺には水がたまっていますので、新しい骨壺に移し替えましょう。
ご遺骨は、飛行機や船に持ち込めます。
宅急便は郵便局の「ゆうパック」のみで送ることができます。
民間業者の、ヤマト運輸や佐川急便で送ることはできません。
宅急便で送る時は、必ず乾燥させて、きちんと梱包材で梱包しましょう。
ゆうパックの送り状の品名には「遺骨」と記載します。
「こわれもの」「逆さま厳禁」「下積み厳禁」に〇で囲んでください。
新しいお墓に移して納骨をする
魂入れ(開眼供養)のタイミングで納骨してもらう方が多いです。
室内型のお墓に納骨する場合は、一度乾燥させます。
量が多い場合は、粉骨する場合もあります。
前のお墓を返還する
前のお墓の撤去工事と墓地の返還をします。
前のお墓は、必ず更地に戻してお返しします。
更地に戻さず、ほったらかしにしている人もいるそうです。
その場合、お墓の撤去費用を寺院が負担をすることはまずありません。
基本的にお墓の撤去の際に、ご身内の方に請求があります。
撤去費用の目安
4.0㎡ 約13万円
3.3㎡ 約32万円
10㎡ 約82万円
撤去費用は、あくまで目安です。
一般的には、すべて(魂抜きから永代供養墓への魂入れ、前の墓地を更地にするまで)にかかる費用は100万円ぐらいと言われています。
永代供養墓とは?
供養する人が、家族(継承者)や近親者の場合は、一般墓になります。
供養する人が、寺院や霊園などの墓地管理者の場合は、永代供養墓となります。
永代供養墓は継ぐ必要はありません。
墓地管理者が供養や管理を担ってくれますので、身寄りのない方の場合は、永代供養墓を検討することが必要だと思われます。
今後、寄付(お布施)や供養等はどうなるのか、管理者にしっかりと確認してください。
永代供養墓の種類
①合祀墓
・家族や個人でひとつのお墓を使うのではなく、いわば他人同士のご遺骨を一緒にお墓に入れ合同で祀られるお墓を指します。
・寺院や民間墓地で運営されていることが多かったのですが、最近は需要の高まりによって公営の墓地が増加しています。しかし、公営墓地は応募倍率が高い傾向にあります。
・管理費はかかりません。
・一般のお墓と比べると料金は安いです。
・霊園の場合、宗旨・宗派は問われません。
・納骨した後は合祀となり、ご遺骨を取り出すことはできません。
合祀後に遺族から遺骨を返してほしいというトラブルが少なくありません。
合祀する前に遺族と話し合うことをおすすめします。
②納骨堂
・故人の遺骨を納めるための収蔵スペースを備えた建物のことです。
・大半が屋内にあり、ロッカー式や仏壇式、自動搬送式(都内が多い)などの形式があります。
・お花や掃除はすべておまかせです。
・年間の管理費用がかかる場合もあります。
・寺院の納骨堂(ロッカー式)は約50~60万円ぐらい。仏壇式は、家族4人分で約100~200万円ぐらい。自動搬送式は約80~100万円ぐらいです。
・お墓参りにお参りするのも順番待ちや、予約制のところもありますので確認が必要です。
③樹木葬
・人気があり、注目されています。
・墓石の代わりに木の根本などに埋葬するものです。
・樹木葬と一口に言ってもそのスタイルは様々で、樹木ではなく草花や芝生で彩られたガーデン風のものなどもあります。
・樹木だと枯れてしまう場合もあるので、石のプレートのみの場合もあります。
・管理費はかかりません。
・墓石が不要なため一般的なお墓より費用が安いです。(20万円前後が多い)
・霊園さんにとって樹木葬は集客しやすいので、扱っている霊園は多いです。
・どこにご遺骨が埋葬されているのかわからないです。
その他の葬法
1. 海洋散骨
・海に散骨するのが海洋散骨です。(陸に散骨するのは自然葬です。代表的なものは樹木葬)
・海洋散骨には、船貸切で散骨(15~30万円)、他の家族と合同で乗船散骨(10~20万円)、委託して散骨(3~10万円)する方法があります。
・海洋散骨の中で、委託して散骨してもらう代理散骨が一番多い。
・墓石がいらないので、経済的で合理的な葬法として注目を浴びています。費用の面だけではなく、故人の意思を叶えたいという思いから、お客様からの細かい要望も増えてきています。
・ご遺骨をすべて散骨することもできますが、全体の3~5割程度の方が一部を残し、手元供養、樹木葬、または永代供養といった方法を選んでいます。
・全部散骨してしまうとお墓参りができないので、親族とトラブルになるケースもあります。
・海洋散骨件数は年々増加傾向です。それと同時に生前での希望も増えています。
・参入事業者増加によりトラブルも発生しています。例えば、観光地や海水浴場、養殖場の近くでの散骨問題等
・法整備と認知がまだ十分ではありません。
2. 山林散骨
3. 空中散骨
4. バルーン散骨
費用は、約20~30万円くらい。
5. 宇宙散骨
・ロケットで飛ばす。
・ご遺骨は、ほんのごく少量で約7万円くらい。ご遺骨全部の場合は、約200~300万円ぐらい。
上記のその他の葬法はまだ、一般的な葬法ではないので今後価格は変動していきます。
散骨業者の選び方
散骨業者を選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。
まず、散骨業者が提供するプランの内容を確認しましょう。
散骨が合同で行われるのか、それとも個人単位で行われるのか、粉骨がプランに含まれているのか、それともオプションなのかなど、確認が必要です。
また、散骨業者が実在する企業かどうかを確認することも重要です。
悪質な業者は実体が無い場合があります。
さらに、価格の安さに騙されないように注意しましょう。
散骨費用は船の大きさや散骨する場所、サービスの内容で大きく左右されます。
業者が電話や対面での相談時に丁寧に相談に応じてくれるかどうかは重要です。
散骨業者とのトラブルの多くは、業者からの不十分な説明に起因しています。
特にマイナス面やデメリットについても誠実に説明してくれれば、安心感が増します。
後悔のない散骨を実現するためにも、相談に丁寧に応じてくれる業者を選びましょう。
最後に
株式会社鎌倉新書が調査した第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023年)によれば、購入されたお墓の種類で一番多かったのは、継承者不要の「樹木葬」が51.8%でした。
これに続いて、「納骨堂」が20.2%、「一般墓」が19.1%という結果が得られました。
一つのお墓を守っていく従来のスタイルから、継承者不要のタイプへお墓の在り方も変化していることが示されています。
身寄りのないご高齢者の場合、生前のうちにご自身の供養の方針を決めておくことはもちろんのこと、ご自身が亡くなった後にお墓を管理する方がいらっしゃらない場合には、墓じまいの準備をしておく必要があります。
身寄りのない方がお墓を管理している場合は、事前に墓じまいをします。
お墓参りができるうちに、お墓の今後のあり方を今のうちに考えておきましょう。