身寄りのない高齢者のための身元保証サービスを知ろう
身元保証の支援が必要になる方は、男性が3分の2を占めていると言われています。
75~84歳が最も多く、その半数には子供もいます。
身寄りになる子供がいるにもかかわらず、身元保証の問題に直面してしまうケースは今後増えると予想されます。
病院に入院する際には、入院手続きの段階で、迅速に連絡が取れる保証人の情報を記載する必要があります。
同様に、高齢者住宅や老人ホームへの入居時にも、身元保証人や緊急連絡先をなどの記載を求められることがほとんどです。
身元保証人は、生活の支援、施設への入居時、医療の同意、病院への入退院時、ご本人が亡くなった時の葬儀・供養、お部屋の家財処分と様々な場面で求められます。
身元保証人は家族や親族のうち血縁関係の近い者が望ましいとされていました。
近年は、一人暮らしで身寄りがなかったり、家族の支援が受けられないなど、身元保証人を用意できないケースが増えてきています。
そこで、家族や親族に代わって身元保証や連帯保証、身元引受人といった役割を果たすサービスを提供する事業者が登場しました。
病院・高齢者施設の身元保証に関する現状
病院・施設の9割以上が、入院・入所の希望者に身元保証人を求めています。
身元保証人がいない場合の病院・高齢者施設の対応
・「入院・入所させる」を選択した病院・施設は、3.5%
・「入院・入所をお断りする」を選択した病院・施設は、15.1%
・「必要な場面ごとに個別に対応する」を選択した病院・施設は、60.3%
・身元保証人の代わりに、「成年後見制度」や「身元保証会社」の利用を求める旨の回答は、15.6%
【引用】:行政評価局 高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)
※ 現状は、成年後見人が身元保証人として受け入れている施設や病院が少なからずありますが、成年後見人は身元保証人になれません。成年後見人と身元保証人を兼務すると、利益相反に該当してしまうためです。
病院や高齢者施設にとって、身元保証人がなぜ必要なのか?
一つめの理由は、病院や高齢者施設の利用料を本人に代わって支払ってくれる人を担保することで運営リスクを大きく軽減することができるからです。
支払う資力があったとしても、銀行に行けないなどの理由で支払いが滞ってしまうこともあります。
そんな滞納状態を施設が簡単に認めてしまうと、赤字状態が続き倒産になりかねません。
二つめの理由は、利用者であるご本人がその病院や高齢者施設に何らかの事情でいられなくなったときに移転先を手配することや亡くなったときのご遺体の引き取りをしてもらうためです。
また、入居契約は死亡によって終了するため、施設の職員は亡くなった入居者の火葬や納骨、遺産に関わる財産や預貯金通帳などを勝手に処理することは許されません。
そのため、身元保証人を立てておけばこうした後処理を、ひっ迫している病院や高齢者施設の業務から切り離すことができます。
病院や介護施設は入院・入所を拒んではいけない?
厚生労働省は平成30年4月27日に通達により、身元保証人等がいないことのみを理由に入院を拒否することは「医師法19条1項に抵触する」との公的な見解を示し、また、平成30年8月30日に福祉施設においても「入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない」との見解を示しています。
つまり、医療機関・介護保険施設等は、正当な理由なくサービス提供を拒否することはできず、入院・入所の際に、身元保証人等がいないことのみを理由に入院・入所を拒むことは不適当であるとされています。
【引用】:高齢者等終身サポート事業者ガイドライン
しかし、実際には経営上の理由から、身元保証人がいないこと以外の理由を挙げて断るケースが多く見られます。
例えば、「入居希望者が多く、空きがない」、「スタッフが不足しているので新たなご入居者様をお迎えすることが難しい」など・・・
そのため、家族や身元保証人がいない場合でも、高齢者等終身サポート事業者の身元保証サービスを利用すれば、身寄りのない方でも入院や介護施設への入所が可能となるため、ニーズが高まっています。
身元保証人の役割
身元引受人
・ご遺体の引き取りをする。
・施設や病院の退去時に費用の精算や手続き、荷物の引き取りなどを行う。
・身元引受人になれる人は、ご本人と同一世帯・別世帯は問わない。
連帯保証人
・支払いが滞った際の連帯保証をする。
・医療費や入所費用などの金銭的な債務保証する。
・連帯保証人になれる人は、ご本人と別世帯にの方に限る。
身元保証人
・保証人、身元引受人、連帯保証人などの名称のいかん問わず、すべての役割を担う。
・高齢者に何があってもご本人に代わって対応する。
・家賃の支払いを保証するだけでなく、孤独死を防ぐこと、亡くなられた後の対応、病院への付き添い、医療行為への代弁、身の回りのこまごましたお世話、何らかの事故があれば原状復帰などの対応をする。
※ 現在、高齢期に発生する身元保証についての法的な裏付けや明確な定義はありません。
病院・高齢者施設のお困りごと
❶ 緊急連絡先に関すること
・緊急時の連絡先の確保。
❷ 入院計画書、ケアプラン等に関すること
・本人の同意がとれない、計画書が本人の希望に添っているか、どんな治療を望むのか。
❸ 入院・入所中に必要な物品の準備に関すること
・購入費用を回収できない。
❹ 入院費、入所費に関すること
・未収金が回収できない。意思疎通がとれず、預金等があっても支払困難。
❺ 退院・退所支援に関すること
・退院後の受入先が決まらない。
❻ 死亡時の遺体・遺品の引取り等に関すること
・死亡時の対応に苦慮。
❼ 医療行為の同意に関すること
・判断に迷う。
【引用】:行政評価局 高齢者の身元保証に関する調査(行政相談契機)
病院・高齢者施設のお困りごとは、そのまま病院・高齢者施設が身元保証人に求めているものとなります。
このように、身元保証人に求められる役割は多岐にわたるということがわかります。
身元保証人が必要になる方
下記に該当する方で財産管理、終末期の医療対応、ご自身の葬儀・供養などを依頼できる人がいない場合は、身元保証人の検討が必要になります。
・お子様のいないご夫婦
・お子様との関係性が悪い方
・お子様が遠方にいる方
・未婚の方
・家族にご迷惑をかけたくない方
・離婚されてお子様と疎遠の方
・配偶者が亡くなりおひとり身の方
・認知症が不安な方
身元保証人が必要になる場面
一番多いのは、病院に入院する際や老人ホームなどの高齢者施設に入居する際に身元保証人や連帯保証人を求められます。
下記のような場面でも必要になります。
・生活の支援
・医療の同意・終末期の医師との対応
・ご本人が亡くなったとき
・葬儀・供養の手配
高齢者向け身元保証サービス等の選び方
ご家族やご親族の有無にかかわらず、さまざまな事情により入院・入所の際に身元保証人を立てられない高齢者は、高齢者等終身サポート事業者の利用を検討してみましょう。
高齢者等終身サポート事業者は、主に「身元保証等サービス」、「死後事務サービス」、「日常生活支援サービス」を提供しています。
これらの事業者の運営母体には、士業団体、福祉関係者の団体、墓石販売店、寺院、葬儀会社、NPO法人などがあります。
入院・入居時の身元保証だけでなく、日用品の買い物代行や通院の付き添い、さらには亡くなられた後のご遺体の引き取りや葬儀の手配、遺品整理まで行うところもあります。
こちらもあわせてご覧ください。
「死後手続&身元保証で老後の不安解消!終身サポート事業者一覧」
身元保証サービスのサポートの流れと時間軸
身元保証サービス及び死後事務サービスを提供している高齢者等終身サポート事業者を利用する際の主な流れです。
事業者によってサポート内容はさまざまですが、生前からご逝去後まで対応している場合の一例です。
事業者によって異なるため、資料を請求してご検討ください。
高齢者等終身サポート事業者に依頼する際の注意点
身元保証サービス等をおこなう高齢者等終身サポート事業者が健全な運営を行っているか確認する必要があります。
健全な運営の基準として、以下のものを参考にしてください。
1. 寄付(遺贈、死因贈与)ありきの運営となっていないか。
寄付金を前提としている事業者は、運営が安定しにくい状況になりやすいです。
また、高齢者等終身サポート事業において、利用者が亡くなった際に、預託金の残りや相続財産を事業者に寄付することを契約条件にしたり、寄付を前提とした契約プランを用意するケースがあります。
しかし、このような寄付が本当に利用者の意思に基づくものか疑問が残るため、こうした契約は避けるべきです。
2. 契約書は公正証書で行っているか。
一般的には、判断能力がしっかりしている元気なうちに契約書や遺言書を作成する必要があります。
判断能力があるときに作成することで、自分の意思を正確に伝えることができ、後々のトラブルを防ぐことができます。
一部の事業者では、本人の体調が悪くなり、判断能力が衰えたときに遺言書の作成をすすめるところがあります。
このような状況では、本人が内容を十分に理解できないまま遺言書を作成させられる可能性があります。
その結果、遺言書にすべての財産をその事業者に寄付(遺贈、死因贈与)する内容が記載されることがあり、これがその事業者の狙いである場合もあります。
したがって、体調が良く、しっかりとした判断力があるうちに必要なすべての契約書と遺言書を作成することが重要です。
3. 信託口座による財産管理を行っているか。
預けたお金を信託銀行や信託会社に預ける「信託口座」を利用する方法が増えてきています。
信託口座を活用することで、利用者のお金を安全に保護できます。
信託口座を使わず、事業者が自社の口座にお金をまとめて管理している場合、不正や横領のリスクが高くなる可能性があります。
そのため、信託口座を活用した管理方法を選ぶことが、より安心と言えるでしょう。
また、高齢者等終身サポート事業者が、日常生活支援サービスや死後事務サービスを提供するために、利用者から事前にお金を預かることがあります。
ガイドラインではこのお金は、事業者の運営資金とは別に管理することが推奨されています。
管理方法や約束ごとが契約書にきちんと明記されているか、必ず確認してみてください。
4. 死後事務の対応範囲が明確になっているか。
ガイドラインでは、「死後事務サービス」において、利用者が亡くなった際にすぐに対応できるよう、事前に利用者や関係機関としっかりと話し合っておくことが求められています。
例えば、利用者が亡くなった場合、事業者は速やかに葬儀業者に連絡し、必要な手続きを進める必要があります。
特に、死亡届については、事業者が任意後見人または任意後見受任者である場合、自身で提出できますが、そうでない場合は相続人に連絡する必要があるかもしれません。
さらに、医療保険の手続き、借りていた家の残置物の整理、公共料金や携帯電話の支払い・解約など、利用者が生前に関わっていた事柄についても、適切に手続きを進めることが求められています。
これらの手続きを確実に行うためにも、事前に確認しておくことが重要です。
5. 第三者や第三者機関による監督を行っているか。
現在、サービスの質や運営方法に関する問題が発生した場合、これを管理・監督する公的な機関や業界団体が存在しないため、利用者からの苦情やトラブルが生じています。
そのため、事業者は、内部で厳格な業務研修を実施し、スタッフが身元保証業務やその他のサポート業務を適切に行えるよう教育することが不可欠です。
また、事業者は、内部監督体制を確立し、業務に従事する者が適切に業務を遂行しているかどうかを常に確認する仕組みを整えていることが大事です。
6. 病院の駆けつけや医師対応を行っているか。
緊急時に迅速に対応するためには、事前に利用者や関係機関と話し合い、緊急連絡先を確認しておくとともに、医療・介護関係者に事業者の連絡先を伝えておくことが重要です。
入院時の支援については、医療機関と契約内容を確認し、対応の可否を伝える必要があります。
また、医療に関する意思決定は利用者本人が行うため、その意思を尊重し適切に反映させることが求められます。
高齢者等終身サポート事業者が意思を代弁する場合は、事前に書面で記された意思を確認し、正確に医療機関に伝えることが重要です。
さらに、利用者が作成した医療や介護に関する書面が適切に保管され、必要に応じて医療機関に渡す準備が整っているか(システムの構築)も確認する必要があります。
【引用】:高齢者等終身サポート事業者ガイドライン
身元保証等サービスの費用は?
身元保証サービス、死後事務サービス、日常生活支援サービスがセットになっている場合、費用が高額になることが多いです。
契約時に支払う費用、月額費用、使った分だけ支払う費用等があります。
契約時に支払う費用の相場は、120~300万円です。
身元保証人が不要な一部の高齢者施設や高齢者等終身サポート事業者と提携している高齢者施設では、施設入居費用に追加料金が発生し、契約時に支払う費用のみで+300~400万円に達するところもあるようです。
参考までに、三井住友信託銀行の「おひとりさま信託」は死後事務サービスに特化しており、最低預け入れ金額は300万円からです。
このサービスでは、死後事務手続きやペットの終身管理を行います。
身元保証サービスや日常生活支援サービスは行っていません。
金額は高めです。
身元保証を依頼することは、一生のパートナーになることをお願いするようなものです。
まずは、複数の高齢者等終身サポート事業者へ資料請求して比較検討をしてみてから信頼できる高齢者等終身サポート事業者に相談しましょう。
こちらもあわせてご覧ください。
「死後手続&身元保証で老後の不安解消!終身サポート事業者一覧」
最後に
現在は身寄りがないから高齢者等終身サポート事業者のサービスを利用するというのが主な動機ですが、今後は家族がいたとしても、家族に負担をかけたくないという理由で高齢者等終身サポート事業者のサービスを利用するケースが増えて行くでしょう。