身寄りのない方の終活とは?
「終活(しゅうかつ)」とは、人生の最後に向けて行う準備や総括の活動を指す言葉であり、終末に向けての準備活動とされています。
例えば、自分の葬儀やお墓のことを事前に決めておいたり、遺言書を書いたり、自分の願いをエンディングノートに書いておくといったことです。
終活は、人々が自身の死を意識し、人生の集大成で、遺族や周囲に迷惑をかけることなく円滑な移行を実現することを目的としています。
「終活」という言葉が社会に広まり始めた当初、葬儀社は積極的に「エンディングノート」を提供していました。
この葬儀社の積極的な取り組みにより、最初は葬儀や供養に関するテーマが中心であり、お墓の選び方や葬儀の準備など、比較的ネガティブな側面が強調されていました。
しかし、時間が経ち現在は、「終活」の意味合いは変化しました。
生前整理や老後のライフプランなど定年退職後の人生をどのように充実させるかという前向きな視点も含まれるようになりました。
この考え方が広まり、個人が自身の死に向き合うだけでなく、人生全体をより良く生きるための考え方として捉えられるようになったのです。
終活は、人々が将来への希望や計画を持ちながら、自分らしい人生を歩むための手段として注目を集めています。
高齢社会における孤独死の現状と今後の対策
孤独死の平均発見日数は18日
単身生活者のシニアの方の増加とともに、孤独死の問題が深刻化しています。
孤独死が発生してから発見されるまでの平均日数は18日ですが、約4割は3日以内に発見される一方で、15日以上経過してから発見されるケースも3割を超えています。
特に、単身生活者の方の場合は発見が遅れやすく、遺体の腐敗が進んだ悲惨な状況で見つかることも少なくありません。
【参考資料】:日本少額短期保険協会孤独死対策委員会「第7回孤独死現状レポート」
孤独死の発見者と地域のつながり
孤独死の第一発見者の約4割は親族や友人などの「近親者」ですが、単身生活者の方は頼れる親族がいないため、この割合はさらに低くなり、発見者の多くは職業上の関係者に限られます。
近親者による発見率が低くなることで、発見の遅れが生じるリスクが高まると考えられます。
孤独死の発見者の内訳は以下の通りです。
近親者(親族・友人):39.4%
職業上の関係者(不動産管理会社、仲介会社、オーナー・大家、行政サービス、民間見守りサービス、宅配業者等・警察など):49.6%
他人(隣人など):11.0%
また、男女別で見ると、女性の方が近親者による発見率が10ポイントほど高いことが分かっています。
これは、女性の方が地域との関わりを持つ傾向があるためと考えられます。
一方で、男性は社会とのつながりが希薄になりやすく、孤独死の発見が遅れやすいという課題があります。
【参考資料】:日本少額短期保険協会孤独死対策委員会「第7回孤独死現状レポート」
孤独死が発覚する主な理由
孤独死が発覚する要因として、最も多いのは「音信不通・訪問」で全体の51.3%を占めています。
しかし、これは定期的に連絡を取り合う人がいる場合に限られます。
孤独死発見の理由と発見までの日数の平均は以下の通りです。
音信不通・訪問(51.3%):発見までの平均日数 13日
異臭・居室の異常(25.1%):発見までの平均日数 24日
家賃滞納(13.1%):発見までの平均日数 28日
郵便物の滞留(10.2%):発見までの平均日数 22日
頼れる人がいない単身生活者の方は、定期的に訪ねてくれる家族がいないため、「音信不通・訪問」による発見は難しくなります。
そのため、異臭や家賃滞納といった異変によって発見されるケースが多くなり、結果的に発見までの期間が長くなる傾向にあります。
【参考資料】:学研Cocofump
孤独死が及ぼす経済や社会への影響
孤独死が発生すると、原状回復費用など多額の負担が生じ、関係者に迷惑をかける可能性があります。
孤独死が発生すると、以下のような費用がかかることが一般的です。
・ 残置物処理費用:平均約23.6万円
・ 原状回復費用:平均約38.1万円
・ 家賃保証費用:平均約30.8万円
これらを合計すると約92万円にものぼり、賃貸住宅で孤独死が発生した場合、大家(賃貸オーナー)にとっては大きな負担となります。
その結果、シニアの方に対する「貸し渋り」が発生し、単身生活者のシニアの方の住まい探しがさらに困難になるという悪循環を生んでいます。
【参考資料】:日本少額短期保険協会孤独死対策委員会「第7回孤独死現状レポート」
孤独死を防ぐためにできること
頼れる人がいない単身生活者の方が孤独死を防ぐには、社会とのつながりを意識的に作ることが重要です。
具体的には、以下のような対策が考えられます。
1. 地域の見守りサービスを利用する
自治体やNPOが提供する見守りサービスに登録し、定期的な訪問や電話連絡を受ける。
2. 緊急連絡先を確保する
信頼できる友人や知人、福祉関係者などに連絡先を伝えておく。
3. 民間の高齢者等終身サポート事業者のサービスを活用する
身元保証や生活サポートを提供する法人と契約し、万が一の際の対応を依頼する。
4. 管理人や近隣住民との関係を築く
アパートやマンションの管理人に連絡先を伝え、異変があれば気づいてもらえる環境を作る。
5. 定期的な連絡を習慣化する
週に1回でも電話やメールをする習慣をつけることで、異常があった際に早期発見につながる。
これらのポイントを意識しながら、“おひとり様の終活”に取り組みましょう。
おひとり様の終活
健康で元気な時には、一人暮らしは自由な生活を楽しむにはいいですが、もしも自身が体調を崩してしまった場合、誰が手助けをしてくれるのかという不安を抱える方が多く見られます。
このような不安感は、人々の中に広がっており、支え合う社会の重要性が再認識されています。
おひとり様の方々は、自立した生活をしながらも、将来に向けての準備やサポート体制の確立について検討する必要があります。
地域やコミュニティとの密接なつながりを構築することや、緊急時の連絡先や頼れるサポートネットワークの整備、老後の住まいの選択、生前整理、さらには亡くなった後の手続きの整備などは、安心して一人暮らしを続けるために欠かせない重要な取り組みです。
加えて、医療や看護に関する意向を明確にすることもまた大切です。
これには、緊急時の医療処置や延命措置の有無などが含まれます。
自分の価値観や希望を尊重しながら、医療的な状況に対する指針を示すことで、望む最期を迎えることができます。
さらに、終活の一環として、自身の思い出や人生の価値観を整理し、家族や友人に伝える方法を準備することも重要です。
これにより、遺された人々があなたの願いや想いを理解し、大切に受け継いでくれることができます。
これらの取り組みは、個人が自分の未来を見据えながら、安心して充実した一人暮らしを楽しむための手助けとなります。
社会全体で、おひとり様の方々がこれらの重要な要素をサポートし合うことで、より良い生活環境を共に築いていくことができるでしょう。
終活のテーマ
おひとり様、身寄りのない方の終活に関しての検討すべき内容です。
頼れる家族がいないことを原則と考えて準備しましょう。
1⃣ 葬儀・供養等の方針
・菩提寺の有無
・戒名・葬儀の希望形態
・葬儀の参列者のリスト
・お墓の希望形態
2⃣ 相続や遺言の方針
・遺言書の作成
・遺産の配分
・家族へのメッセージ
3⃣ 生前整理
・預金、保険
・各種カード類
・不動産
・家財
・墓じまいの検討
4⃣ 介護・医療の方針
・病名・余命の告知
・延命治療
・尊厳死
・臓器提供、献体
・寝たきり、認知症
5⃣老後のライフプラン
・住まいの選択、住み替えの計画(老人ホーム)
・旅行
・趣味の活動
・老後の資金計画
エンディングノートを作成しよう
エンディングノートは、自分自身に万一のことがあったときに備えて、自分に関するさまざまな情報をまとめておくノートです。
また、自分の人生を見つめ直し、新たな考え方を生み出すきっかけにもなるでしょう。
エンディングノートには、法的効力はありません。
エンディングノートは手書きでもパソコンで作成してもかまいません。
市販で購入したり、無料でダウンロードすることもできます。
エンディングノートに書くもの
① ご本人の健康状態に関する事
- かかりつけの病院
- 持病
- 服用している薬
② 嗜好や趣味について
- 食べ物の好き嫌い
- 続けている習い事
- 好きな音楽
③ 将来に不安を感じていることや、もしもの時にしてほしいこと
- お金の管理
- ご本人の身の回りの事
④ ペットを飼っているのであればペットについて
- ペットの名前
- 性別
- 生年月日
- 好きな食べ物
- 嫌いな食べ物
- 持病
- かかりつけの獣医
- ペット保険について
- ペットシッターさんがいれば連絡先
- もしも飼うことができなくなった時にお願いする人や団体
詳しくは、「身寄りのない方が亡くなってもペットが安心できる終活・相続方法とは?」もご覧ください。
⑤ パソコンや携帯電話を持っているのであればその処分について
- 契約しているプロバイダー
- SNSのアカウントやID、パスワード
詳しくは、「身寄りのない方が亡くなった場合の遺品整理は?」もご覧ください。
➅ 日記や写真、身の回りのものについて
- 処分するのか、家族に読んでほしいのかほしくないのか、棺に入れてほしいのか
- 遺影としての写真を選んで保管してあるのか
遺影として使ってほしい写真を選んである場合は、エンディングノートといっしょに保管してあるとわかりやすいです。
愛用品の品を誰かに託したい場合は、何を誰に譲りたいのか書いておきましょう。
⑦ 万が一の場合、知らせてほしい人の名簿
- ご本人の葬儀に参列することを希望されると思われる方々の名前、住所、電話番号
また、将来ご本人が事故や病気で医師から延命治療を施すかどうかという判断をご本人の家族が迫られた場合、どうしてほしいのか示しておきましょう。
治る見込みがない場合でも、心臓が止まるまで治療を施してほしいのか、あるいは過度な治療をせずに人間としての尊厳を保ったまま死を迎える「尊厳死」を希望するのか今の気持ちを書いておきましょう。
「尊厳死」を希望する場合や身寄りのない方は、エンディングノートに書くだけでなく「リビングウイル=終末期の医療に関する意思表示書」を作成しましょう。
詳しくは、「身寄りのない方の延命治療とは?」をご覧ください。
⑧ 葬儀を希望するかしないか、希望する場合どんな葬儀にするのか
- 一般葬、家族葬、直葬
- 葬儀をまかせたい人
- 納骨の方法(自然葬や樹木葬等)
- 生前に葬祭の予約をしている場合は、契約している葬儀社、担当者名
葬儀や納骨で希望がある事柄は、エンディングノートに細かく書いておきましょう。
詳しくは「身寄りのない方が亡くなった場合の葬儀は?」をご覧ください。
高価なものや不動産などについては、「遺言書」などを別途作成して想いがしっかりと活かされるように準備しておきましょう。
もし、ご本人に後を託す人がいない場合は「死後事務契約」などを結んで、ご本人が安心して最終幕を迎えられるように準備しておくといいかもしれません。
詳しくは「身寄りのない方が終活に必要なこと」をご覧ください。
エンディングノートを作成した後の問題点
せっかくエンディングノートに自分の希望を詳細に書いたとしても、そのノートが見つからなければ、その希望が実行に移されることはありません。
そうならないように、ご本人に何か起こった時には、まずこの「エンディングノート」を見てくれるように、家族や親族、友達、託した人にしっかりと伝えておきましょう。
多くの自治体は、エンディングノートを配布していますが、本人の死亡前の希望や契約の情報を必要な人に伝える取り組みをおこなっている自治体はまだ少ないです。
最後に
終活を考える際に検討すべき内容は多岐にわたります。
これらの検討事項は、個人の状況や価値観に合わせて柔軟に考える必要があります。
終活は、自分自身と向き合いながら、最期まで自分らしい人生を送るための重要な取り組みです。
頼れる人がいない単身生活者の方や、周囲に迷惑をかけたくない方、自分の想いをより確かなものにしたい方は、こちら「身寄りのない方が終活に必要なこと」をご参考になさってください。